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Ⅰ 売買契約を結ぶ
2012.12.12
売買契約の基礎知識
重要事項の説明を受け、契約条件について買主、売主双方が合意したら、売買契約を締結します。
いったん契約を締結すると、簡単に解除することはできませんので事前に契約内容を十分に確認することが重要です。
不動産会社にも説明義務などが課されていますが、最終的に契約は「自己責任」で締結するものであることをしっかりと理解してください。
ポイント①売買契約の基本的な考え方を知る
1.契約は原則として自由
売主と買主との契約は、法令に違反する、公序良俗に反するなどの問題がない限りは自由です。
逆にいえば、契約は自己責任で締結することが原則ということです。
もちろん、消費者が一方的に不利益を被る契約とならないよう、一定の法整備がなされていますが、すべてをカバーできるわけではありません。
最終的には自己責任でしっかりと契約内容を確認した上で契約に臨むことが重要です。
なお、契約に定めがない事項については、民法その他の関係法令に従い、協議の上で決定することとなります。
したがって、重要な契約条件が不明確であると、契約後のトラブルにつながってしまいますので注意しましょう。
2.売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合には契約内容に制限がある。
不動産会社(宅地建物取引業者)が売主となる場合には、買主に不利益な契約が結ばれることのないよう、宅地建物取引業法により不動産会社に対して、契約内容により、不動産会社に対して契約内容に一定の制限が設けられています。
これによって、不動産取引の専門家である不動産会社と、直接契約を締結することとなる買主を保護しています。
3.事業者と消費者の契約については消費者契約法の適用がある。
事業者と消費者との間には、情報力や交渉力に差があることから、消費者契約法では、事業者と消費者との契約(これを「消費者契約」といいます)を対象に、消費者保護を目的とした特別な契約ルールが定められており、不動産売買契約にも影響します。
例えば、消費者が誤認などした場合には、契約を取り消すことができるほか、消費者にとって不利益な条項(瑕疵担保責任など事業者の責任を免責する条項など)が無効になるなどの規定があります。
なお、消費者契約法における消費者とは個人を指しますが、個人であっても事業のための契約などは消費者契約法の保護の対象とはなりません。
あくまでも個人が事業以外の目的で締結する契約が対象です。
このように、不動産売買契約にも消費者契約法の適用があることを理解しておきましょう。
ポイント②手付金について理解する
不動産売買契約では、契約締結時に「手付金」と呼ばれる金銭を買主が売主に対して支払うことが一般的です。
手付金には(1)証約手付
(2)解約手付
(3)違約手付 の3種類があります。
一般的に不動産売買契約では(2)の「解約手付」として授受されます。
なお、民法でも手付金の性質についての特段の定めがない場合には解約手付と推定するとされています。
「解約手付」とは、買主は既に支払った手付金を放棄する(返還を求めない)ことにより、また、売主は既に受けとった手付金の倍額を買主に返すことにより、売買契約を解除することができる手付けをいいます。
ただし、解約手付による契約の解除ができるのは、「相手方が履行に着手するまで」とされています。
つまり、すでに相手方が契約に定められた約束事を実行している場合には手付けによる解除はできません。
ポイント③契約を結んだら、簡単に解除できない!
特に、不動産売買のように大きな取引を行う場合は、契約は売主と買主の信頼関係の上に成り立つ大事な約束です。
そのため、いったん契約を締結すると、一般的には、一方の都合で簡単に契約を解除することができません。
契約の解除には、主に以下のようなものがあります。
・クーリングオフによる解除
売主が不動産会社(宅地建物取引業者)で、かつ一定の条件を満たす場合に限り、
無条件で契約を解除することができる。
・手付解除
相手方の契約の履行に着手するまでは、手付金の放棄、または倍返しにより契約を解除することができる。
・危険負担による解除
天災による物件の滅失等により、契約の目的が達せられない場合などは、買主は無条件で契約を解除することができる。
・瑕疵担保(かしたんぽ)責任に基づく解除
物件に重大な瑕疵(欠陥など)があった場合に、その瑕疵により契約の目的が達せられない場合は、買主は無条件で契約を解除することができる。
・特約による解除(ローン特約など)
特約の内容に応じて解除することができる。例えば、「ローン特約」の場合なら買主に落ち度がなくても住宅ローンを受けられなかった場合に、買主は無条件で契約を解除することができる。
・合意による解除
当事者の合意に基づく条件で契約を解除することができる。
※上記の内容は一般的なものであり、個々の契約で契約の解除に関する取扱いは異なります。
ポイント④瑕疵担保責任について理解する
「雨漏り」や「建物本体の白アリ被害」のような物件の欠陥などを「瑕疵(かし)」といいます。
そのうち、買主が売主から知らされていなかった「瑕疵」を法的には「隠れた瑕疵」といいます。
隠れた瑕疵が判明した場合、買主は、売主へ物件の修補や損害の賠償を求めることが可能です。
また、欠陥などが重大で住むこともままならない場合などは、契約の解除を求めることもできます。
瑕疵担保責任
このような物件の瑕疵に関する売主の責任を法的には「瑕疵担保責任」といいます。
売買契約では、売主が瑕疵担保責任を負うか否か、負う場合は、物件の引渡しからどのくらいの期間、責任を負うのかなどが取り決められます。
ただし、物件の隠れた瑕疵をめぐるトラブルは非常に多いことから、売主は物件の瑕疵について誠実に情報提供する。
買主は充分に物件を確認することで、契約前に瑕疵を明らかにしていくことが重要です。
なお、不動産会社(宅地建物取引業者)が売主の場合は2年以上瑕疵担保責任を負うことが義務づけられています。
また、新築住宅の場合、売主である不動産会社(宅地建物取引業者)は住宅の重要構造部分等(基礎・柱・屋根・外壁等)について10年間は瑕疵担保責任を負わなければいけません。
売主が倒産するなどで瑕疵担保責任を履行できない状況を回避するために、買主に引き渡す際に、売主には保険への加入か保証金の供託が義務づけられています。
売主は買主に対して、重要事項説明書や売買契約の際に、保険と供託のいずれの措置を採るのかを説明することになっているので、しっかり確認するようにしましょう。
なお、売買契約に瑕疵担保責任の定めがない場合は、民法の規定に基づきます。
民法の規定では、売主の瑕疵担保責任の期間が限定されないことから、一般的に売買契約では、売主が瑕疵担保責任を負う期間を明確にします。
なお、期間の定めがない場合には、売主が瑕疵担保責任を負うのは、買主が隠れた瑕疵を知ってから、1年以内と定められています。
不動産ジャパンホームページより転載 2012.12.12