投稿
木造建築費の大幅アップで火災保険金額の見直しも必須 2023年7月号
2023.12.22
木造住宅の工事原価が大幅上昇中
現在、世界的に広まっているインフレの原因は、コロナ過で世界の
主要都市や港でロックダウンが行われ、経済活動の停滞とともに
各種グローバルサプライチェーンが滞り、世界的な供給不足が生じ
たことが主な原因といえます。その影響はさまざまな分野に及んで
おり、世界的なインフレを引き起こしているが、そのうちの一つ
ともいえるのが、2021年3月頃から表面化してきた「ウッドショッ
ク」と呼ばれる木材価格の急騰です。
木材価格やその他の建設資材の価格上昇は建築費に及ぼします。
建設物価調査会総合研究所が2022年1月に公表した「建築物価建築
費指数(2021年12月分)」によると、住宅(木造)の工事価格は
前月比で4.5%増であり、前年同月比では13.0%の上昇となりました。
2011年を100ポイントとした工事原価は、2021年12月時点で131.2
ポイントでした。工事価格の大幅な上昇が、新築時のコスト上昇と
して意識されることは当然ですが、実は火災保険で必要とされる補償
金額にも大きな影響を及ぼすことにも注意が必要です。
火災保険契約者の8割近くが十分な補償を受けられない状態
火災によって建物に損害が生じたとき、保険でどこまでカバーされる
のか。ソニー損保が2021年12月のデータをもとに、戸建で火災保険を
契約している全国400人を対象にして「火災保険の建物補償と再調達
価格のギャップ調査」を行ったところ、万が一の際、十分な補償を受
けられない可能性のある人が79.3%にも達したことがわかりました。
たとえば現在、加入している火災保険や共済について、「補償金額や
補償内容を変更せず、更新・継続している」と答えた人の割合は、
全体の67.4%を占めています。
しかも、「過去10年間で約30%建築費が上昇していることを知らなかっ
た人」が68.5%を占めました。
かつ、「建築費が上昇しているにもかかわらず、建物保険金額の見直し
をしていない人」は79.3%もいることが判明しました。とはいえ、建物
に及ぶリスクに対して、多くの人が無関心というわけではありません。
火災保険の加入先や契約内容を変更した人のうち、49.5%の人が新たに
地震保険に加入したという数字も出ています。
近年、増えている自然災害に対する危機感が、この数字に表れている
のではないでしょうか。
しかし、こうした自然災害や火災などによって自宅に損害が生じたと
しても、建物保険金額の見直しを行っていない人が79.3%もおり、かつ
2011年から2021年末で住宅(木造)の工事原価が30%以上も値上がり
していることを考えると、損害を被った住宅を再建する際に、現在と
同等の建物を再建できないリスクが高まってきます(ちなみに2023年
4月に発表されて「建設物価建築費指数」の最新データでは、141.3ポ
イントになっており、2011年よりも40%以上の上昇となっていました)。
昨今のように物価が高騰している局面においては、建設費高騰に対し
て補償金額が追いついているのかどうかにも配慮する必要がありそう
です。
火災保険の長期契約が最長で5年
火災保険の長期契約は2015年の10月まで最長36年、2022年10月まで
最長10年で契約することが可能でしたが、2022年10月以降最長で5年
までしか長期契約を結ぶことができなくなりました。
2015年10月までにご自宅を購入され、住宅ローンの借入期間に合わせ
て火災保険を35年の超長期契約をご加入している人は補償金額と再建
築費との差が生じ、現在と同等の建物を再建できないリスクがあります
ので、一度補償内容も含めて見直しされると良いかもしれません。