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警察官立会いの下で開錠し、警察の要請により鍵を交換した行為が自力救済には当たらないとされた事例 2017年11月号
2018.05.16
CASE
賃借人Aは、 マンション一室の賃貸借契約を締結するとともに、賃料等
支払債務について 家賃保証会社Yとの間で保証委託契約を締結しました。
その後、 不動産会社Xが本物件を取得し、 Xは賃貸人の地位ならびに
本件保証契約上の 地位を承継するとともに、管理会社に管理を委託
しました。
管理会社は、Aと連絡がとれず、賃料の支払いもなか ったことから、
Yに対して保証債務の 履行を求め支払いを受けていましたが、 Aが
音信不通のまま3カ月経過したことから、本物件内でAが死亡して
いる可能性を疑い、 警察に相談した上で警察官立会いの下、開錠して
本物件内に立ち入りました。
すると、 中には他人名義の診察券を所持したBがおり、玄関にさまざま
なサイズの靴がある状況であったことから、 鍵がコピーされて不特定
多数の人物が出入りしている可能性が高いとして、 警察官の指示により
鍵を交換する措置を取り、 Yにその経過につ いて報告しました。
Yは、 管理会社の行為が違法な自力救済に当たるとして、 本物件の鍵を
交換した日の前日をも っ て保証契約を解除し、 以降の賃料を保証しな
い旨通知したため、 その支払いを求め てXが提訴しました。
解説
裁判所は、 次のとおり判示し、 Xの請求を認容しました。
(1)Yは、 賃貸人が賃貸目的物を賃借人に使用 ・ 収益させることを
妨害 ・ 拒否した場合、 賃借人は賃貸人に 対して賃料支払債務を負わな
いので、 Yも保証債務を負わないと主張するが、 本件の事実関係におい
てはXの行為が違法な自力救済に当たるとはいえない。
(2)Yは、 XがYに何ら事前の連絡をせずに違法な鍵の交換行為に
及んだものであり、 XY間の信頼関係は破壊されたとして、 Yの解約
通知により本件保証契約は終了したと主張するが、 Xは鍵の交換経緯に
つ いても遅滞 なく報告をしており、 本件保証契約上の信頼関係が破壊
されたものとはいえない。
(3)Yは、 本件保証契約条項では 「非常事態の発生により本物件の
通常の使用が不能とな った場合」 に保証 債務を免れると主張するが、
本件では賃借人であるAが第三者に対して本物件の鍵を交付したことが
原因であり、不可抗力または予見不可能な事情によるものとはいえない。
以上により、 YはXに対し、 本件保証契約に基づき、 AがXに対して
負う賃料等債務の残金につ いての保証債務 を支払う義務を負う
(東京地裁 平成26年11月27日判決)。
総評
賃貸人や管理会社にとって、 家賃を滞納したまま行方不明となって
いる賃借人への対応には苦慮するところで
すが、賃借人に債務不履行があるとしても、 承諾もなく貸室に侵入する、
貸室の鍵を交換し 賃借人の使用を不可 能とする、 退去を促す張り紙を
するなどの行為は、 違法な行為として、 賃貸人は賃借人に対し損害賠償
責任を負 うこととなります (大阪地裁 平成25年10月17日判決他)
ので、 警察官の立会いを求めその指示に従う、 弁護士に対処策を相談
する等の慎重な対応が必要といえます。